月のかたち〜蛮ちゃん編〜
真夜中。幸せすぎる夢を見て、目が醒めて涙が出た。
今だって幸せだ。あの頃とは違うけど、今だってちゃんと。
わかっているのに、何故だか涙が止まらなかった。
「蛮ちゃん…?」
起きていたのか偶然起きたのか、銀次が声をかけてくる。
真っ暗だから、涙は見えないはずだ。それでも気付かれたくなくて、ごしごし目をこすった。
「…蛮ちゃん、抱きしめていい?」
疑問形のくせにオレの返事も聞かずに、腕を伸ばして優しく、でも逃げられない強引さでオレを腕の中に収めてしまう。
「銀…っ」
「何もしないから…このままでいてよ」
お願い…と下手に出られれば、しょうがないと受け入れられる。自分からはそうそう甘えることが出来ないオレのために、銀次は自分がしたいからする、という形をとってくれる事がある。
抱きしめる腕の強さと、高い体温が気持ちいい…。
「蛮ちゃん…大好き」
「…んだよ、いきなり」
「えへへ…何となく言いたくて。大好き…大好きだよ、蛮ちゃん」
「…っるせ…耳にタコ…できんぜ……」
「ごめん。でも、ずーっと好きだよ、蛮ちゃん…v」
あったかくて、優しい言葉。胸に染みて、涙で言葉が詰まる。
嬉しいのに、感謝の言葉どころか「オレも」という一言さえも返せない自分に、嫌悪を感じる。
素直じゃなくて、悪態しか突けないこんなオレのどこをこいつは好きでいてくれるんだろう。
「おやすみ、蛮ちゃん」
「ああ…」
多分泣いている事もばれているはずなのに、何も聞いてこない事に感謝しながら、オレは目を閉じた。
次に目を醒ました時に、オレの宝物が腕の中から消えていないように、しっかり握りしめたままで。
END
実は、これ裏のキャラ日記用に書き始めたんですが…
ちょっと長い&何処が日記やねん!という感じになってしまったので、
文章が死んでますが(って、まあ、いつもですが)短目のSS〜とか言ってみました(ぉ
しかしまあ…うさぎさん泣き虫さんですこと(笑
普段、押し込めている分、わりと蛮ちゃんは悪夢を見ることが多いのでは…
と思うのですが。
…自分で書いてなんですが…宝物…(照
20020701