天野銀次(うさぎ)

 「銀次! テメー、こりゃ一体何のマネだ!?」

 蛮ちゃんが腕にかけられた手錠をガチャつかせながら、睨みつけてくる。

 無限城の一室…オレは蛮ちゃんを閉じ込めた。MAKUBEXには悪いけど、雷帝だった頃の権力を振りかざして、この部屋をオレの物にしてしまった。

 蛮ちゃんを閉じ込める、ただそのためだけに。

 「銀次!」

 「ごめんね、蛮ちゃん」

 無言で見下ろすオレに、苛立つように蛮ちゃんが声を荒げる。きつい瞳だけど…ちょっと潤んでるみたいだよ? 蛮ちゃん。手錠で感じちゃった?

 床に腰を下ろして壁に背を預けた状態で、頭の上で腕を拘束されている蛮ちゃんの目の前に屈み込む。…びくっと一瞬引き攣ったね、蛮ちゃん、オレが怖い?

 「…何のマネなんだよ、こりゃ」

 声のトーンが落ちてる。オレの答えによっては許さないって感じだね。

 蛮ちゃんが許してくれてもくれなくても、オレはもう決めちゃったんだけどね。

 「蛮ちゃんをここに閉じ込めるんだよ。これからずっと、蛮ちゃんはここにいるんだ」

 「…何、言ってやがる…」

 目を見開いて、信じられないという表情で呟く蛮ちゃん。

 信じられないかな? オレはずっと前から蛮ちゃんをこうしたかったんだけど。

 「あ、腕はそのままじゃ辛いだろうから、蛮ちゃんがおとなしくしててくれるなら、外してあげる」

 「…冗談はこの辺でやめとけよ、銀次」

 蛮ちゃんだって、オレが本気だってわかってるくせに、そんな事言うんだね。

 「オレは本気。蛮ちゃんはここにずっといるんだよ。もう誰にも見せない。蛮ちゃんはオレ以外誰も見ないで。それ以外は不自由させないから」

 「銀次…」

 悲しそうな顔しないで、蛮ちゃん。オレがそばにいるから。他の人の分までオレが蛮ちゃんの事愛してるから、それでいいでしょう?

 「何で…こんな……こんなことしなくたって、オレはオメーが一番だって…」

 「うん、言ってくれたよね、オレが一番好きだって。同意の上で抱かれるのはオレだけだって」

 「……っ…わかっ…てんなら、何で…」

 こんな時でも「抱かれる」って言っただけでちょっと赤くなる蛮ちゃんが可愛い…可愛くて、愛しいから、もう誰にも見せたくないんだよ。

 「蛮ちゃん、可愛い…」

 足の間に入って、閉じられないようにしてから、蛮ちゃんの手を拘束してる手錠を引っ張って存在を意識させる。

 「やっ…」

 チャリ…と音がして、蛮ちゃんの細い手首に冷たい手錠が当たる。

 途端にびくっと身を竦ませて、蛮ちゃんは潤み始めた視線を不安げに揺らした。

 「感じる…? 手錠かけられてるだけで? 触ってないのに? これからされることへの想像だけで感じちゃうんだ?」

 「ちがっ…んっ…」

 頭を振って否定しようとする蛮ちゃんの、無防備に晒された二の腕の内側に口付けた。そのままきつめに吸い上げると、体をくねらせて甘い声を上げる。

 「あっ…んんっ…」

 「蛮ちゃんってば、相変わらず淫乱…まだキスマーク一つ付けただけなのに、こんなだよ?」

 間にオレがいるから閉じられない足の付け根で、蛮ちゃん自身は誤魔化せないくらい昂ぶってきてる。って、それはオレもだけどね。

 「銀次……嫌いか…? こんなオレ…」

 もう、蛮ちゃんってば、泣きそうな顔で何言い出すんだよ。大好きだから、閉じ込めたいんじゃないか。

 「そんなわけないじゃん、すごく可愛いってオレ何度も言ってるでしょ?」

 蛮ちゃんってば、すぐ不安げになっちゃうんだから〜。オレが蛮ちゃんを嫌うわけないのにねv

 両手で蛮ちゃんの頬を包んで、触れるだけのキスを何度もv その合間に、大好きって蛮ちゃんが信じるまで繰り返してあげる。

 「蛮ちゃん、大好き。だから、同意の上でもそうじゃなくても、蛮ちゃんの気持ちよさそうな顔、誰にも見せたくない。ずっと、オレだけに見せて? いい顔も笑顔も怒った顔も泣き顔も寝顔も、全部、オレだけに」

 「銀次…」

 こんな独占欲、蛮ちゃんには迷惑かな? でも、好きになったら普通だよね。

 「ずっと、こうしたかったよ…蛮ちゃんが嫌だって言っても、もう離さないから」

 「ああ…」

 綺麗な綺麗な、蛮ちゃんの笑顔。誰かに見せるなんてもったいなさ過ぎる。

 「オメーに縛られるなら…かまわねぇよ。他の奴なんざ見たいと思わねぇくらい、オレん中をオメーでいっぱいにしてみろよ」

 「寝ても醒めてもオレの事しか考えられなくなるくらい、いっぱいにしてあげる…」

 そう言ってオレ達は二人きりの部屋で、深く口付け合った。

 

 「っていうのがオレの望みなんだ〜vvv」

 ドゲシッ!!!

 「いっ…たーーーーーーっっ!!」

 マジ痛っ…涙出ちゃった…。あう〜。

 「痛いように殴ったんだから、当たりめぇだっ!!」

 蛮ちゃんってば、まだ殴り足りないみたいに拳を震わせて、赤い顔で叫んでる。

 なんでー? 今夜の下弦の月に何願う気だ?って蛮ちゃんが聞くから、正直に言ったのに〜。

 「オレ、本気なのに〜」

 「なお悪いわっ」

 いらついたようにタバコを銜えて、スバルから出て行ってしまう。

 「蛮ちゃん、どこ行くの?」

 「うるせぇ! ついてくんじゃねぇっ」

 力いっぱいドアを閉めて、早足で行ってしまった蛮ちゃんを、たれたまま見送った。

 う〜ん、何がいけなかったんだろう?

 

☆☆☆

 

そりゃ「あなたを監禁するのが望みです」って言われて、嬉しい人はあまりいないかと…。
うちの蛮ちゃんは軟禁経験ありだしねぇ。
まあ、その独占欲はちょっと嬉しかったりするんだけどね〜。