天野銀次(うさぎ)
今日はね、下弦の月なんだって。
真夜中に月が出てくるのを待ってると、願い事が叶うんだってさ。二十三夜待ちって言うんだって。
蛮ちゃんは「月が出るの待ってるくらいで、望みが叶うわけねーだろ」って、隣で寝ちゃってるけど…昔からそう言われてるなら、もしかしてそれで叶った人がいるのかもしれないよね?
オレの願いが叶うように努力はするけど、お月様にお願いしておけば、さらに叶う確率が上がるかもしれないもんね。
いつもあんまり遅くまで起きてないから、眠いんだけどさ…。
でも、今日は曇ってるから、月が出るの見えないかなぁ…。
月を待って何を願うんだって?
ええと…願いたい事なら、いっぱいあるんだけど。
蛮ちゃんとずっと一緒にいられますようにとか、蛮ちゃんがもうちょっと触らせてくれると嬉しいなぁとか。たまには、オレを好きだって口に出してほしいなぁとか、部屋が借りたいなぁとかせめて食べるものくらいゴミ漁りしないでもいいようになりたいなぁとか(苦笑
でも、たぶん、そういうことは頑張ればなんとかなるから。
オレが願いたいのは…蛮ちゃんがもう泣かないですみますようにって事。
時々、蛮ちゃんが泣きながら目覚める事がある。あと、蛮ちゃんの過去に関わる事が起きると、外見は普通そうにしてても、心が傷ついてるような痛そうな表情を、ほんとにちょっとだけするから。
どんな夢を見ているのかは知らない、聞かないから。過去に何があったのかも。
蛮ちゃん、聞いてほしくなさそうだから…無理にでも聞いた方がいいのか、わからないけど。
本当は知りたいけど。話してすっきりする事なら、痛い話も一緒に抱えて軽くしてあげたいけど。
でも口に出せないくらい辛い事なら、無理に聞いちゃいけない気がするし…。
夢も過去も、オレにはどうしようもないから。
オレに当り散らして、それで蛮ちゃんが楽になるならそれでもいいのに、それすらしてくれない優しい蛮ちゃんを…
お月様、どうかこれ以上泣かせないでください。
☆☆☆
銀次、ちょっと子供っぽすぎる…?
願いは子供っぽいとは思いませんが。
だって自分にはどうしようもないことは、神頼み(でもないけど)ぐらいしかできないし。