風鳥院花月(ねこ)
HONKYTONKの昼下がり、マスターも銀次さんもいない、めずらしく美堂くんと二人きり。
「猫って、B型が多いそうですね」
退屈そうな美堂くんにそう話しかけてみる。
「へぇ…猿マワシにでも聞いたのか?」
カウンターにうつ伏せてた顔をちょっとだけ上げて、眠そうな視線を向けてくる。本当に退屈した猫みたいだな…。
頭とか撫でたいかも…怒られるだろうけど(笑
「士度は…そういう事は知らないと思いますけど」
「ああ、そうかもな。猿は一緒に寝起きするだけだろうな」
んっ…と伸びをして、煙草に火をつける。僕と話してくれる気になったようだ。
煙草なんか吸わない方がいいのにな…まあ、美堂くんの場合、仕方ないか…。いや、でもあれだけ士度や銀次さんに抱かれてるんだから、性欲を押さえるためってわけでもないだろうし…それとも、まだ足りないのかな、美堂くんには。
「で? オレがB型だから、猫みてぇだとでも言うつもりか? どいつもこいつも独創性がねぇな、同じ事言いやがる」
つまんねぇヤツラ、と言いながらもちょっと楽しそうに笑う美堂くん。
やっぱり綺麗だな…僕とは違う系だけど、十兵衛みたいなわけでもなく…顔が綺麗、動きが綺麗、表情が綺麗で…いつまでも見ていたい。
「他の方にも言われた事が?」
「あんぜ、黒猫だとよ。髪が黒いから黒猫か? 安直だな。それとも…」
ふぃと視線が落ちる。わずかに歪む口元に、自嘲の笑み。
「不吉の象徴とか、そういう意味かもしれねぇけどな」
美堂くんの綺麗な瞳が親に疎まれたっていう話は聞いたことがある。
心の奥底まで覗き込まれるような紫紺の瞳は、綺麗だと思いこそすれ、僕には何が嫌なのかさっぱりわからないけど。
夢を見せることが邪悪? そんな事より邪悪で汚いものは、この世にいっぱいあるじゃないか。
幻影を見せることができる力…それは人ならざる力だから、それ自体は神に近いものだと思うけど。
だからその力自体を嫌うことは間違っていると思う…って、僕が言った所で美堂くんのトラウマが薄れるわけじゃないだろうから言わないけどね。
「あとは、野良って言った奴もいたし、血統書付きみてぇだって言った奴もいたな」
血統書付き…僕や十兵衛もそうだけど、美堂くんも確かにね(笑
あ、でも士度や笑師もある意味、血統書付きってことになるのかな。わりといるもんだなぁ、血統書付きの人間。
血統書が付いてるのは悪くないけど、飼い慣らされてるのは面白くないかもね。
「血統書付きの野良猫だと、最高ですね」
「…変なもんが好きなんだな、弦巻き」
「そうですか? 血筋は確かな方がいいけど、自分に懐いてない猫を懐かせる過程が楽しいじゃないですか」
例えば、貴方のような。と笑って見せると、通じたらしく、美堂くんも楽しそうに笑い返してきた。
「へぇ…弦巻きにそういう趣味があるたぁ、知らなかったぜ? オメーはてっきり、盲目的に従順な犬の方が好きだと思ってたけどな」
十兵衛ね。確かに十兵衛は好きだけど。貴方に僕に興味を持たせてみたいのも本当のこと。
今はただ「その他」でしかない僕のために、貴方のその瞳が揺れるのが見てみたい…。
まだ数人しか触れたことがないらしい美堂くんの心に触れて、そこに僕の名を刻むことが出来たなら…それはきっと…ある意味最高の快感じゃないだろうか。
「もちろん、犬も好きですよ。でも、猫もいいですよね、綺麗だし…それに手強そうで」
「で? 懐いたら、飽きて捨てんのか? 怖ぇヤツ」
くす…と笑う美堂くんは、お前に落とせるわけがないとでも言いたそうだ。
勝負は…やってみないとわからないんですよ? 美堂くん。侮ってるなら好都合かな。でも、さっさと落ちられてもつまらないけど…。
まあ、とりあえず、僕の名前を呼ばせることを目標にしましょうか。
覚悟してくださいね? 血統書付きの美貌の黒猫さんv
☆☆☆
花月…も書くのが難しい人。
って、誰でも楽なわけじゃないんですが(^^;
どうも口調が納得がいかなくて…難しいです。
しかし、さらっと「あれだけ士度や銀次さんに抱かれてるんだから」とか言ってますね…花月って(^^;
あと、性欲を抑えるためにタバコって、何で知ってるんですかー。
いや、ただの私のミスですが(−−;