王波児(ねこ)
「お前さぁ…大丈夫なのか?」
「…何がだよ?」
事の後、ぼんやりと煙草をふかしている蛮に問いかけると、逆に聞き返された。
「銀次だよ。浮気はいい加減にしとかないと、捨てられて泣いても、オレは仲裁しないぞ」
まあ、こうやって相手しちまうオレが言うことでもないかもしれないが。
本当に捨てられたら、泣くだけじゃ済まないぐらいハマってるのに、なんで浮気を繰り返すんだろうなぁ、こいつは。
「…オレがこんななのは、今更だぜ? 銀次だって、わかってんだろ」
わかってたって、嫌だろう。
蛮のヤツ…もしかして想像した事ないのか? まあ、あんだけ追っかけられて執着されてれば、思いつきもしないか。
「ちょっと想像してみろ、銀次がお前じゃないヤツを抱いてるところ」
「銀次が…?」
不審そうに首を傾げて、それでも宙を見つめて想像してみたのか。
その表情が、すぅっと凍りついていく。
「想像だけでも嫌だろう? わかったら、お前もやめとけ」
って…?
「蛮…?」
火のついた煙草を持ったまま、よっぽどショックだったのか灰が落ちそうになっても動かない。
とりあえず取り上げて揉み消すと、ようやく表情が動いた。
「冗談じゃねぇよ!」
叫んで、怒りも露わにベッドに拳を叩き込む。
「ベッドにあたるな、壊れたらどうする」
「銀次はオレのもんなんだよ! 銀次が他のヤツを相手にするなんて、絶対に、嫌だ!!」
「そう思ったら…って、おい」
銀次だって同じ気持ちなんだろうから浮気はやめろと諭す前に、蛮は適当に服を身につけると飛び出していっちまった。
えー…と? もしかして、変に煽っただけで、まずいこと言っちまったのかな…?
あの勢いのまま蛮が戻って、銀次と喧嘩でもしたら…やっぱり、オレのせいになるのか…?
続き→
☆☆☆
波児は蛮ちゃんに説教できるめずらしい人間だと思ってます。
他の相手に言われたら、「うるせぇ」で済ますけど、波児に言われたらやっぱりちょっと考えるんじゃないかと。
まあ、うちの波児はちょっと情けなくて間抜けだけど(^^;
いや、まあ、うん。うちの攻は基本的に情けないからね…。
夏彦とか黒っぽい銀次はレアなタイプなのですよん。