美堂蛮(ねこ)
…やなもの、見ちまった。
見るまで全然気付かなかった…あいつらが、あんなに似合いだって事に。
寝る準備(っつっても、埃よけに敷いたものの上に寝転がって、余ってる服を引っ掛けるだけだけどな)してる銀次の方へ、四つん這いで近寄っていく。
我ながら、獲物を狙う獣みてぇだな…まんま、そうか(笑
「なぁ…しようぜ、銀次…」
こう誘うのも、今日で三日目。いい加減、銀次の野郎でも変な顔すっかな、とは思ってたが…やっぱり、不審な顔しやがった。
「ねぇ…蛮ちゃん、どうかしたの?」
どうか、ね。まあ、自分でもめずらしいって自覚してっけど。
「んだよ…したくねぇってのか…?」
そんなこと…言わねぇよ、な…?
案の定、銀次は強く否定してきて、ちょっとほっとする。
「そんなこと言うわけないじゃん! そうじゃなくってさ…」
する気があんなら、それでいいんだよ。
どうせ…オレの中のつまんねぇ不安は、オメーに何言われたって消えねぇんだから。
オメーに抱かれることでしか…きっと和らがねぇ。
だから、オメーは何も言わなくていいんだ。どうせ、うまく言えやしねぇだろ?
「だったら…いいじゃねぇか、しようぜ…?」
オレが抱きつくと、抱き返してくる。
…銀次の腕の強さに嬉しくなっちまうオレは…やっぱり変なんだよな、女じゃねぇのによ。
女の体は嫌いじゃねぇ、独特の柔らかさといい匂いがすっからな。
けど、オレに快感を与えてくれるのは男の体で、安心できるのは銀次の腕ってのは…やっぱり普通じゃねぇよな。今更だけどよ。
と、銀次が戸惑いがちに口を開いた。
「蛮ちゃん…やっぱり変だよ。今日で三日連続だよ? 明日は仕事あるし…」
まあ…そりゃ、オメーでも変だと思うだろうなぁ。普段はオメーとするのは故意に回数減らしてるくれぇだし。
明日の仕事は…やばい奴等と当たんなきゃ、何とかなんだろ。失敗すると金が入んなくて、マジやべぇけどな。
でもしょうがねぇだろ? 明日の仕事の成功より…今のオレにとっちゃ、オメーに抱かれる事の方が大事なんだからよ。
…ああ、それとも。
「…三日も連続じゃ、飽きちまう?」
そうだよな…女みてぇな柔らけぇ綺麗な体じゃねぇし。骨ばったこんな男の体じゃ…飽きちまうよな。
「そうじゃないってば! いつもさせてくれないのに、何でそんなに積極的なのかなって…」
飽きねぇの? こんな体でも?
そういや、夏彦も毎日のようにしてたよな…。あの頃はされるがまんま、嫌も応もなかったけどな。
そっか…やじゃねぇか。
オレは腕を緩めて、銀次の目を見つめた。
こんな暗闇ん中でも、綺麗な琥珀色だよな…。トパーズは魔を打ち砕くって言うけど…いつか、オメーに打ち砕かれる日が来るのかも知れねぇな。
どう足掻いてもオレは闇側の存在で、オメーは光の中が似合う奴だからな。
それを…三日前に再認識しちまったぜ、ここんとこ忘れてたのに…よ。
オレとは相容れねぇ光のオメーをオレが魅力的だと感じるように、邪悪なこの瞳がオメーにとってちょっとでも魅惑的に映るといい…。
「オメーとしたい気分なんだよ…何度でもな。それじゃ、理由になんねぇか…?」
何度でも……明日の仕事になんざ行けねぇくらい、めちゃくちゃにされてぇんだよ…オメーに。
「銀次…」
押し倒されて、押さえつけられ、性急に口付けられる…そうだ、もっとだ…どれくらいオメーがオレに執着してるか、オレの体に嫌ってほどわからせてくれ…。
「…蛮ちゃん…」
っ、いい、ぜ…その、いつもより低い声…たまんねぇ…。
「ねぇ、蛮ちゃん…知ってるよね?」
あん…? 何をだよ…?
オレの顔を両手で包んで、真剣に覗き込んでくる。
「オレが蛮ちゃんを大好きだって事と…絶対、何があったって、この手を離す気なんかないって事…」
――――…そうだな、そうだったよな…。
「ああ…知ってんぜ…?」
銀次の首に腕を回して笑いかけた俺に、銀次がぱっと顔を輝かせた。
「うんv そうだよね、オレ、何度も言ってるしv」
でも、オメーは知らねぇよな。
何度言われても、時々ふっと不安になっちまうことも、夏実ちゃんとオメーが笑いながら歩いてるの見て、すっげー似合いだなと思っちまった事も。
ぜってー教えてやる気なんかねぇけどな。
悪ぃな、銀次。オレの方こそ、オメーを手放す気なんかねぇんだよ。
地獄まで…一緒だぜ…?
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☆☆☆
原作の蛮ちゃんは、絶対銀次を地獄までなんか連れて行きませんよねぇ…。
綺麗な場所に置いて行きそう。
その方が銀次にとって残酷だったとしても。
「邪悪なものを打ち砕くインペリアルトパーズ」は元ネタは眩惑の摩天楼だったかな。
というか、パワーストーンの話としては常識??