天野銀次(ねこ)

 蛮ちゃんがなんか変だ。

 「なぁ…しようぜ、銀次…」

 四つん這いで近寄ってきて、オレを甘く誘う。

 それはもちろんいいんだけど、嬉しいんだけど…。

 「ねぇ…蛮ちゃん、どうかしたの?」

 「んだよ…したくねぇってのか…?」

 「そんなこと言うわけないじゃん! そうじゃなくってさ…」

 オレの襟元を掴んで何度かキスすると、抱きついてくる。

 「だったら…いいじゃねぇか、しようぜ…?」

 吐息のようなささやき、蛮ちゃんの体温、マルボロの匂いの混じった蛮ちゃんの微かな体臭…こんな風に思いっきり誘われてしたくないなんて事は絶対無いよ。オレのほうが蛮ちゃんのこと、いつもいつも感じたいと思ってるんだから。

 でも…やっぱり何か変だ。

 オレは蛮ちゃんをぎゅっと抱きしめて、もう一度聞いた。

 蛮ちゃんの機嫌が悪くなるかもしれないけど…やっぱり、何か原因があるなら知りたいし。

 「蛮ちゃん…やっぱり変だよ。今日で三日連続だよ? 明日は仕事あるし…」

 そう、こうやって夜になると蛮ちゃんが積極的に誘ってくるのも、今日で三日目。

 一日目は純粋に蛮ちゃんがその気になってくれたって嬉しくて、昨夜は2日も連続なんてめずらしいなって思って。そして今日三日目。絶対に変だよ。

 「…三日も連続じゃ、飽きちまう?」

 何で悲しそうにそんなこと言うんだよ! オレが蛮ちゃんに飽きるなんてあるわけないってば!

 「そうじゃないってば! いつもさせてくれないのに、何でそんなに積極的なのかなって…」

 すると蛮ちゃんは腕を緩めて、オレを見つめると、綺麗に笑いながら言った。

 「オメーとしたい気分なんだよ…何度でもな。それじゃ、理由になんねぇか…?」

 っ、ずるい…っ、そんな笑顔でそんなこと言われたら…。

 「銀次…」

 まだなんかあるって思っても、問い詰める余裕なんかなくなっちゃうよ…蛮ちゃんの、知能犯っ。



→続き
☆☆☆

 

知能犯って、何かちょっと意味が違ったような気がしますが、まあ使ってるのは銀次なので、一般的な方で。

確信犯もなぁ…蛮ちゃんに似合う言葉かと思ったら、銀次の方に似合うのが本当の意味だったとは。
まだまだ知らない言葉がいっぱいです。