美堂蛮(ねこ)

(5日の日記の続き)

 「……」

 ホスト野郎が視界から消えるまでその後ろ姿を睨み付けて、オレに視線を移すと、銀次はわずかに微笑んだ。

 「蛮ちゃん、どうしたの? つまんない?」

 …そうやって笑ってっと、ちゃんと「ロウアータウンの支配者」に見えるよな。普段より、頭良さそうに見えんぜ?

 「…人が多いとこは苦手だからな」

 嘘じゃねぇけど、無難な答え。

 言えねぇだろ…あん中に居たらオレも、銀次にとっては「守ってやらなきゃならない奴の一人」でしかねぇような気がするから嫌だ、なんて。

 銀次が執着する『美堂蛮』としてじゃなく、自分を慕ってくる存在として、支配者の目で見下されるなんて冗談じゃねぇんだよ。

 「ああ、そうだね。蛮ちゃんは苦手だよね、人が多いとこ。じゃあ、帰る時は声かけてね」

 穏やかな寛容さ…支配者の余裕に見えるのは、オレの気のせいか?

 「オメーはまだ居んのか…?」

 「うん、もうちょっと。せっかくみんな楽しんでるのに、オレがもう帰るって言ったら、みんなが気を悪くするしね」

 『みんなが気を悪くするから』ねぇ…オレの気分は?

 わかってんだよ、ガキみてぇなヤキモチだってのは。わかってっけど…オレを優先しねぇ銀次に腹が立つ。

 気をつけてね、と背を向ける銀次に声をかける。…オレに背を向けるなんて許さねぇんだよ。

 「退屈なんだよ……しねぇ…?」

 驚いたように振り返る銀次と視線を合わせて、オレは満足のために微笑んだ。

 そう…オメーはずっとオレのことだけ見てろよ…。

 「…ここで?」

 「ああ。それともこんなとこで帝王様が男とヤってたら、示しがつかねぇか?」

 ただでさえ無限城の中じゃ雷帝をしらねぇ奴はいねぇのに、すぐそこの部屋にゃVOLTSの奴等が集まってっからな。誰か呼びに来るかも知れねぇし。

 「そんな事はどうだっていいよ」 

 熱い手が頬に触れる。この手が好きだ。何度オレを抱いても、満足する事無く伸ばされ続けるこの腕が。

 唇をなぞる指を舐めると、銀次の目の奥に見慣れた色が灯った。

 「…蛮ちゃんってば、こんなとこでオレを挑発して…」

 銀次がオレのシャツの襟元に手をかける。そのまま力任せに下に引くと、シャツが破れボタンが弾け飛んだ。

 「先に言っとくけど、優しくなんかできないからね…?」

 「いいぜ。酷く抱けよ」

 もっとオレに執着すればいい。他の奴等の生死すらどうでもよくなるくらい、オレに溺れて、オレだけ見つめ続けろよ。

 そうしてオレを縛ってくれ。その視線で、腕で、心で、言葉で。

 オメーの姿が見えなくなったら、呼吸すらままならなくなるくらいに。

 …もう、かなりそれに近ぇとこまで来てっけどな。

 「酷く…? 後悔しないでね、蛮ちゃん…」

 自嘲したのが銀次を嗤ったように見えたのか、オレを通路の床に押し倒すと、首に噛みつくように口付けながら、熱い手で荒々しく体を弄っていく。

 「後悔…させてみろよ…っ」

 性急な愛撫に息を乱しかけながらもオレはそう言い放った。

 強気なオレの言葉に顔を上げた銀次と笑い合い、どちらからともなく深く口付けた。



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☆☆☆

 

こういう銀次も好きですが…いつもこうは書けません(^^;
普段は明るくて、あんまり頭はよくないけど「いい人」って感じで、天然ボケも入ってて、蛮ちゃんにボカボカ殴られてたりするんだけど、実はこういう面も持ってる…って所がいい…のかな?(^^;

雷帝化すると、うちの銀次はこう少しキツイ感じになりますが、これが完全に雷帝化してしまうと、暴君で鬼畜な攻様〜vvvになるってわけでもなく(ぉぃ
いくら書いても、結構銀次って難しい…(^^;

それでも「蛮ちゃんには銀次」だと思いますけどねv