笑師春樹(ねこ)
はあ…ワイ、どないしよう…。
もう目に焼き付いてしもうた、腕に書かれた11桁の数字を眺めて、ワイはまたため息をついた。
何を似合わんため息なんかついてるんやって?
…あーだめや、ギャグも出てこん。あの人ん事で、頭ん中いっぱいで…
ああ…どないしよう。
今日はな、ヘビ野郎ハンを観察しよ思て、ヘビ野郎ハンの車を公園の草むらの影から覗いとったんや。
この暑いのに、よく二人して車ん中なんかにおるなぁ…まあ、今日は風があるさかい、日陰で風が通ればまだマシか…。
あ〜…ワイ、煙草は感心せんけど、煙草を持つ指の感じがとっても様になって、綺麗やわぁ…。いくらヘビ野郎ハンが綺麗ゆうたかて、女の人とは違う。男にしては細い指やけど、やっぱし関節の浮き出た柔らかそうには程遠い手ぇなのに…何であんなに綺麗なんやろ。
と、ワイが見惚れていると…銀次ハンが何か話してるのを、煙草を吹かしながら聞いていたヘビ野郎ハンが煙草を揉み消して、ふと銀次ハンの方に顔を近付けたかと思うたら……
ぎえっ…………ヘビ野郎ハンと銀次ハンて、そういう関係だったん?(汗)
士度クンのみならず、あの雷帝まで食べてしまうとは…恐るべし、ヘビ野郎ハン!
って、ちょっと待ちぃ。てことは、士度クンの事は遊びなんか? いくらヘビ野郎ハンでも、ワイの士度クンを弄ぶなんて許さへんで!ああ、可哀想な士度クン…待っとってなぁ士度クン、ワイが必ず仇を取って……って、あれ?
ふと気付けば、車ん中には銀次ハンしかおらへん。
ヘビ野郎ハンは、いつの間にいなくなったんや……?
「よぉ」
「うわぁっ」
気配も何もないのに、いきなり後ろに居んでほしいわ!
「なんかおもしろいもんでも見えんのか?」
覗きたぁいい趣味だなぁ…って笑ぅてんのに、目ぇが笑ぅてへん…(汗)。
「で、誰に頼まれてオレ達を見張ってたんだよ? …って、聞いたとこで、答えるわけねぇか…」
どうやって吐かせっかな〜と、これ見よがしに指をばきばきと鳴らしてみせるヘビ野郎ハン。頼まれて、って仕事やないんやけど、これ。
「いや、これは仕事やなくて…」
「へぇ、誤魔化そうってのか? あいつの目の前で同じ事言うだけの勇気、あんだろうな?」
言って、ひょいとヘビ野郎ハンが顎をしゃくった方をふと見ると…ひいぃっ! 銀次ハンが車ん中から、雷帝の目付きで睨んどるぅ!!
「ほ、ほんまやっ! ほんまに誰かに依頼されたとかやなくて、ワイはただ単にヘビ野郎ハンに興味があって…っ」
「あ? オレ?」
一瞬、目ぇを見開いて、きょとんとした顔をする。あ、美人ハンやとは思っとったけど、そういうかわええ顔も出来るんやなぁ…新鮮な発見やわ。
「…って、美堂蛮だっつってんだろうがっ」
と思ったら、ぎりっとまなじりを上げて怒鳴り付けてくる。
「あ、すんまへん、美堂ハン」
やっぱり美人ハンは、どんな表情でも綺麗やわ…。
見惚れながらワイが適当に返事をすると、ヘビ野郎ハンはちょっと考え込むような表情で呟いた。
「オレに興味、ねぇ…」
しばらくワイを見つめた後に、にやりと笑う。…なんやの、その獲物を見付けたような笑顔は…(汗
「じゃあ、暇な時には遊んでやっから、覗きはやめろ。いいな?」
「遊んでくれるて、銀次ハンも一緒に?」
そうだったら、身の危険は感じずにすむかなぁ、でも…うわー、銀次ハン、まだワイのこと睨んどるー(T_T) あの視線にずっと晒されるんか? 勘弁してぇな。
「銀次? ああ…じゃ、遊びたくなったら電話かけてこいよ。あーっと…書くもん」
「ボールペンしか、ないけど…」
「…ま、いいか」
そう言ってヘビ野郎ハンは、ワイの腕を掴むと、ボールペンでぐいぐいと携帯番号を書いた。紙てゆうてくれたら、あるのにー(泣
「いたたたー、痛いてー(泣」
「美堂蛮様の携帯番号を書いてやってんだから、我慢しやがれ」
あう〜、ボールペンで書くゆうより、みみず腫れになっとるよー(泣
でも、オレ様な物言いが、ごっつヘビ野郎ハンらしいわー。
書き終えて、満足そうに頷くのも機嫌のいい猫みたいや。
「じゃ、今度覗きなんかしやがったら、ただじゃおかねぇからな」
ふぃと踵を返して行ってしまいそうなヘビ野郎ハンに、もう一回確認する。だって、電話かけて、そんなことゆうてないとか言われたら、悲しいやん。
「ほんまに、遊んでくれるんか?」
「暇だったらな。…じゃあ…口約束、な」
そうゆうて、ワイの肩をとんっと押して銀次ハンの視界から外れるようにすると、ヘビ野郎ハンは煙草の匂いのするキスをしてきた……。
ヘビ野郎ハンの事は気になる。気になるんやけど…
この番号に電話したら、ワイも食われてしまうんやろか?
☆☆☆
どこまでも勘違いの笑師(笑
笑やん〜、蛮ちゃんは攻じゃないんだよ〜?
まあ、攻にも見えるけどね。
士度食って、銀次食って、笑師もって…どんだけ〜。