美堂蛮(ねこ)

 だーっ、あっちぃ!!

 何なんだよ、この連日の暑さは! まあ、元々緑が少ない上に、冷房を無意味にかけて、外に熱い空気を出すっていう悪循環をかましてる街だけどよ。

 何か、毎年暑さが酷くなってるような気がすんぜ。気のせいなら、いーんだけどな。

 

 あんま連日HONKYTONKにだべってるってのも、さすがに波児の目がいてーから、今日は図書館に避難だ。

 まあ、オレ一人なら避難場所もあんだけど…こんだけあちーとさすがに銀次にスバルの番をさせとくわけにもいかねーし、銀次を連れてくってのは…この暑さ以上にうざい事態になりそうだしな。…想像しただけでも、冷房を楽しむ余裕はなくなるぜ…。

 

 で、図書館だ。はぁー…涼しい…生き返るな…(恍惚

 元々好きなんだよな、図書館とか美術館とか。気持ちいい空調の効き具合とか、音のない空間とか。自分の体もなくなって…青い水の中にゆっくり沈んでいく感じっつーか…知識と感性に溢れたこのスペースが、何とも言えずに心地いい。

 まあ今日はここもオレ等みてぇに避暑に来た奴等が多くて、ざわざわしてっし、日本じゃ美術館の入場料が高いから、そうそう行けねーけどな。

 さーて、久しく来てなかったから、おもしれー本が増えてっかなv

 本を見繕って席を確保し、読み始めてしばらく経った頃―――。

 「……ねぇ、蛮ちゃん…」

 …来やがったな、オレがなかなか図書館に来られない理由その2。ちなみに、理由その1は仕事を探さなきゃなんねーからだ。夏彦んとこで、好きなだけ本を読めてた頃が懐かしいぜ。

 小さな声で呼びかけてきたのは、言うまでもなく銀次だ。力一杯「つまらない」って顔に書いてあんだろうな…見なくてもわかんぜ。

 「んだよ」

 目も向けずに小さく返す。そっけなさにちょっと止まって、それでも予測通りに「つまんない」と言い出した。

 まったく…字が読めねぇわけじゃねーのに、こいつには知識欲とか…ねぇんだろうな。こいつの持ってる欲ときたら、本能に関わる方ばっかだからなぁ。

 「そんで? 一緒に外に出て、うだれって?」

 「…あぅー…」

 まったく……こいつの面ときたら、主人に叱られて、耳もしっぽも垂れ下がった犬みてぇ…。しょうがねぇなぁ、ったく…。

 銀次に席をとっとくように言って、何冊か本を見繕ってくる。座り直して、わんこをちょいちょいと手招いてやる。

 「ほら、背中貸してやっから、日が落ちるまで昼寝してろよ」

 「…うんvv」

 ぱっと表情を明るくして、しっぽを振りながら嬉々としてオレの後ろに座る。

 単純な奴だなー…相変わらず、と思っていると、腰に両手が回ってきた…って、おい? 普通背中を貸すって言ったら、背中合わせだろうが。何で後ろから抱き付いてんだよ!

 「だって、この方が安定するんだもん♪ 蛮ちゃんの体温気持ちいいしv」

 確かにちょっと冷房効きすぎてっから、銀次の温もりは気持ちいい…が、周りの視線が冷房以上に冷てぇんだけど。

 「おやすみ、蛮ちゃんv」

 ま、いいか、わんこは静かになったし、本に集中してりゃ人の視線なんかどうでも。

 

 結局閉館時間までいて、長時間冷房の中にいたせいで冷え切った体をあっためて、汗まみれ。

 ったく、早く涼しくなんねーかな。

 

☆☆☆

 

夏もそうだけど、冬の寒さを二人はどうやって逃れているんだろうと不思議。
車って、エアコン入れないとすごい寒いし、夜の間中エンジンかけとくほどお金ないだろうし…。
やっぱりHONKYTONKに間借りなのかなぁ。