天野銀次(うさぎ)
蛮ちゃんはよくしゃべるように見えて、大事なことはほとんど口にしない。
昔のこととか、本心とかはまったくと言っていいくらい。
昔のことは言いたくないならいいんだけど、本心はもうちょっとしゃべってくれてもいいのになぁ…照れ隠しに暴力ふるっちゃうほど照れ屋だから、しょうがないけど(笑
言ってくれない上に、蛮ちゃん優しくて、一回拾った動物を捨てるなんてできない人だから…だからもしかしたら、オレのことが好きじゃなくても拾っちゃった以上捨てられなくて付き合ってくれてるのかな…なんて思う時もあるんだけど。
でもたぶん、蛮ちゃんはオレの事好きでいてくれてる。それも蛮ちゃんの中では結構、上位にいるんじゃないかな、と思えるのは。
「…銀次…」
えっちの後、まだ息の乱れてる蛮ちゃんを抱きしめると、大抵は恥ずかしいのか暴れ出しちゃって一気にさっきまでの雰囲気はなくなっちゃうんだけど…。
「銀次…」
「蛮ちゃん」
たまに、蛮ちゃんの口数が極端に減っちゃう時がある。
口数っていうか…なんだかオレの名前以外忘れちゃったかのように、何度も何度もオレの名前だけを呼んでくれる時が。
「…銀次」
長くて綺麗な指でオレの前髪をそっとかきあげて、そのまま滑らせた指で頬に触れる。
指先が少し触れてるだけなのに、すごくどきどきするし気持ちがいい…。
「蛮ちゃん…」
いつもは見たいって言うと嫌がられちゃう綺麗な瞳も、隠すどころか目を離したくないかのようにじいっと見つめ返してくる。
何度見ても、すっごく綺麗な瞳の色…。
蛮ちゃんの目に映ってるオレは、どんな存在なんだろう。蛮ちゃんの隣にいてもいいくらいには、マシな人間なのかな…。
「銀次…」
両方の手でオレの頬を包むようにして、わずかに目を伏せると顔を近付けてくる。
そっと重なった唇が離れると、また吐息のようにオレの名前を呟く。
「…ぎんじ……」
「蛮ちゃん…大好きだよ…」
蛮ちゃんがいつもと違うこんな姿を見せるのは、きっとオレにだけだ。
他の誰にも見せたくないし、こんな風には誰の名前も呼んでほしくない。
これからもずっと…オレの名前だけ、呼んでいて。
「蛮ちゃん…」
「ん……」
逃げない体を抱き寄せて、オレは想いを込めて口付け返した。
☆☆☆
短いですが、銀次お誕生日おめでとう〜vということで、ラブラブで。
…ラブラブになってますよね? どっかせつないですか?(^^;