筧十兵衛(うさぎ)
「今日は下弦だね〜」
花月の声がする。穏やかに笑っている。見えなくてもわかる。
幼い頃から今の姿まで、花月の声も姿も、脳裏に焼き付いているから。
「そうだな」
「下弦の弓張り月に、君は何を願う?」
何を願うかって…?
そんな事は…決まっている。昔と変わるわけなんかない。
「…お前の幸せだ、花月」
「あはは、ありがとう、十兵衛。僕も君の幸せを願うよ」
嬉しくないのか? 花月…声が、わずかに声の色が違う。
「花月…?」
「だからね、十兵衛。君は本当の望みを願えばいいんだよ? ああ、わかってるよ、君がちゃんと僕の幸せを願っていてくれている事は。わかっているから…本当の望みから目を逸らさないでいい」
オレの本当の望み…? オレが花月の幸せ以外に何を…本当に望んでいると…?
「オレが何を望んでいるというんだ?」
「さあ…? 僕は君じゃないからわからないけど」
そう言いながらも、確信している声で、オレの閉じたままの瞼に触れながら花月は言った。
「この目で…見たい物があるのかもね」
「このままでも、何も不自由はしていない」
見えなくても、そこに何があるか、誰が居るかわかる。だから目が見える必要なんかない。
「そうだね、不自由はないだろうね。でも…色はわからないからさ」
色…?
「十兵衛…見たい色が、あるだろう?」
別に…もう一度見たい色など……
「思い付いた?」
首を傾げて笑っている気配がする…何故、花月は楽しそうなんだ。
「…花月」
「大丈夫、あの色に惹かれる事は変じゃないし、あの奇跡のような色は、誰だって見たくなるよ。それに、君は直に見たことがないだろう?」
確かに…マクベスのパソコンのディスプレイ越しに、見ただけだ。
あの、鮮やかな紫紺の色…。
「とても綺麗だよ。目が離せなくなるくらいにね」
「そうなのか…」
「うん。早く見られるといいね」
二十三夜の月に願ってもいいのだろうか。
もう一度、この世に二つとないと言われる鮮やかに艶やかな瞳を、この目で見たいと望んでも…。
☆☆☆
十兵衛→花月は恋愛感情があるんだとか。公式に出てる辺り、すごいですよねぇ。
ここはここで、ラブラブで好きです。雨流が混じると、ちょっとごたごたするけど。
ラブラブの癖に、二人とも蛮ちゃんが気になるという…う〜ん、逆ハー設定(笑
ちなみに、十兵衛と蛮ちゃんなら、当然蛮ちゃんが受です。総受けですから。
たぶん誘い受。いや、襲い受?(笑
まあ、そこまで行くことはないと思うけど。